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環境分析化学研究室(上野研)

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業績(原著論文)-1

 

原著論文

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2014

Mizouchi, S., Ichiba, M., Takigami, H., Kajiwara, N., Takamuku, T., Miyajima, T., Kodama, H., Someya, T., Ueno, D. (2015) Exposure assessment of organophosphorus and organobromine flame retardants via indoor dust from elementary schools and domestic houses. Chemosphere, 123, 17-25.

 佐賀市内の小学校および一般家庭を対象に、ハウスダスト中の有機リン系難燃可塑剤(PFRs)を測定した。化学分析の結果、全てのダスト試料からPFRsが検出され、リン酸トリスブトキシエチル(TBOEP)がもっとも高濃度で検出された。TBOEPやフェニル系PFRsは小学校で、塩素系PFRsは一般家庭で有意に高濃度であった。TBOEPやフェニル系PFRsはフロアワックスに多く含まれており、小学校ではそれらを床面保護に利用していることが高濃度となった要因と考えられる。一方、塩素系PFRsは家電製品に多く利用されており、一般家庭では家電製品を多く利用していることがその要因と示唆される。一日耐用摂取量(TDI)をもちいたリスク評価の結果、一部の試料でTBOEPのハザードインデックス(HI)が1を超えることが明らかとなった。TBOEPの摂取量を低減するため、小学校における主要な発生源と考えられるTBOEPを含むワックスの使用を控えることが必要であると結論づけられた。


溝内重和, 市場正良, 宮島徹, 兒玉宏樹, 高椋利幸, 染谷孝, 上野大介 (2014) 小学校室内環境における未規制VOCs濃度の現状把握. 室内環境, 17, 69-79.

 佐賀市内の小学校を対象に、室内環境における未規制VOCsを測定した。化学分析の結果、すべての教室から未規制VOCsが検出され、検出された未規制VOCsの中では、2-エチル-1-ヘキサノール(2E1H)が最も高濃度かつ高頻度で検出された。続いて、グリコールエーテル類(GEs)、テキサノール類(Texanols)が高濃度で検出された。検出された濃度をLowest concentration of interest(LCI)と比較したところ、それらのハザードインデックス(HI)は1以下であった。一方で、本調査で得られた一部の教室における未規制VOCs濃度は、学校環境における2E1Hがアレルギー発症の報告値に近く、またGEs濃度範囲は子供を対象とした疫学調査におけるアレルギー疾患と関係が見られた濃度範囲と同程度であった。今後の小学校室内環境における未規制VOCsの濃度低減が望まれる。

 

2013

仲井邦彦, 上野大介, 中田晴彦 (2013) 東日本大震災後における三陸沿岸部の化学物質汚染の推移. 学術の動向, 7月号, 34-41.

 東日本大震災被災地(三陸沿岸部)において津波堆積物や二枚貝などの環境試料を採取し、PCBsやPAHs、放射能等の環境汚染物質を測定した。結果として、PCBsやPAHsの環境レベルは震災直後に増加し、約一年後には低減傾向を示していることが明らかとなった。放射性物質による汚染は河川環境で長期化している。本研究グループでは河川環境における放射能汚染モニタリングに向け、指標生物として水生昆虫ヒゲナガカワトビケラに着目した”トビケラウオッチ”の手法をもちい、放射能汚染の将来予測にとりくんでいる。

 

2010

Ueno, D., Isobe, T., Ramu, K., Tanabe, S., Alaee, M., Marvin, C., Inoue, K., Someya, T., Miyajima, T., Kodama, H., Nakata, H. (2010) Spatial distribution of hexabromocyclododecanes (HBCDs), polybrominated diphenyl ethers (PBDEs) and organochlorines in bivalves from Japanese coastal waters. Chemosphere, 78, 1213-1219.

 アジア地域における臭素系難燃剤HBCDによる海洋汚染は日本において比較的高レベルであることが報告されているが(Ueno et al., 2006)、日本沿岸におけるHBCD残留濃度の詳細は不明であった。そこで日本全沿岸域から採取したカキおよびイガイを化学分析に供し、HBCD汚染の全容の把握およびその汚染源解明を試みた。化学分析の結果全ての試料からHBCDが検出され、最高濃度は関西の工業地帯で採取されたカキから検出された(最大で5200 ng/g 脂肪重当たり)。カキを魚介類の代表としてHBCDに関する食品安全性を試算したところ、毒性値と比較して1000倍以上低いことが明らかとなった。

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2009

市場正良, 高橋達也, 山下善功, 高石恵子, 西村晃一, 蒲池将史, 近藤敏弘, 松本明子, 上野大介, 宮島徹 (2009) 佐賀環境フォーラムにおけるシックスクール問題への取り組み. 日本衛生学雑誌, 64, 26-31. 

 校舎から放出される揮発性物質(VOCs)による児童の健康被害「シックスクール問題」が社会的に関心を集めている。そのような中、佐賀大学主催の佐賀環境フォーラムと佐賀市教育委員会は、佐賀市内小中学校の教室内空気中VOCs濃度を共同で調査している。調査の結果、ホルムアルデヒドは対象教室の4割で文部科学省の指針値を超過しており、TVOCsでは1割の教室で厚生労働省の基準を超過していた。そこでホルムアルデヒド濃度の低減対策として窓の開放条件を検討したところ、約10分の窓開放でホルムアルデヒドの濃度は1/10まで低減することが明らかとなった。

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2008

Ueno, D., Darling, C., Alaee, M., Pacepavicius, G., Teixeira, C., Campbell, L., Letcher, R.J., Bergman, A., Marsh, G., Muir, D. (2008) Hydroxylated Polybrominated Diphenyl Ethers (OH-PBDEs) in the Abiotic Environment: Surface Water and Precipitation from Ontario, Canada. Environmental Science and Technology, 42, 1657-1664.

 有機臭素系難燃剤PBDEsの水酸化代謝物であるOH-PBDEsは、甲状腺ホルモン輸送タンパクの結合阻害作用などの毒性が報告されており、ヒトや野生生物への影響が懸念されてきた。これまでOH-PBDEsは、一部のヒトや野生生物から検出されてきたが、環境試料から直接検出された例は極めて少なく、その情報は断片的であった。本研究ではカナダ五大湖周辺のすべての環境試料(湖水、雨水、雪)からOH-PBDEsを網羅的に検出し、これら物質が普遍的に存在していることを証明した。またOH-PBDEsは、PBDEsの光分解や都市下水処理場の処理過程によって生成していることが推察された。本研究は、OH-PBDEsが環境中で生成していること、またこれらが水環境を通じて野生生物に影響を及ぼす可能性があることを示唆した初めての報告である。

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2007

Ueno, D., Darling, C., Alaee, M., Campbell, L., Pacepavicius, G., Teixeira C., Muir, D. (2007) Detection of Hydroxylated Polychlorinated Biphenyls (OH-PCBs) in the Abiotic Environment:  Surface Water and Precipitation from Ontario, Canada. Environmental Science and Technology, 41, 1841-1848.

 PCBの水酸化代謝物OH-PCBsは、女性ホルモン様作用や甲状腺ホルモン様作用などがある化学物質としてヒトや野生生物への影響が懸念されてきた。これら物質は一部のヒトや野生生物から検出されてきたが、環境試料から直接検出された例はない。本研究ではカナダ五大湖周辺のすべての環境試料(湖水、雨水、雪)からOH-PCBsを検出し、これら物質が普遍的に存在していることを証明した。環境中で生成されたOH-PCBsが、湖水などを通じて野生生物に蓄積し影響を及ぼす可能性があることを示唆した初めての報告である。

 

Ramu, K., Kajiwara, N., Sudaryanto, A., Isobe, T., Takahashi, S., Subramanian, A., Ueno, D., Zheng, G.J., Lam, P.K.S., Takada, H., Zakaria, M.P., Viet, P.H., Prudente, M., Tana, T.S., Tanabe, S. (2007) Asian Mussel Watch Program: Contamination Status of Polybrominated Diphenyl Ethers and Organochlorines in Coastal Waters of Asian Countries. Environmental Science and Technology, 41, 4580-4586.

 有機臭素系難燃剤PBDEsによるアジア-太平洋諸国の沿岸域汚染現状を、二枚貝イガイを指標生物として調査した(アジア-太平洋・マッセルウオッチプロジェクト)。韓国や香港で採取されたイガイから比較的高濃度のPBDEsが検出され、日本のレベルは相対的に低かった。韓国や中国の工業発展にともなうPBDE使用量の増加や、先進諸国からアジア途上国に持ち込まれているe-waste(家電や電子機器などの廃棄物)からの流出などがその要因として考えられた。

 

Andresen, J.A., Muir, D., Ueno, D., Darling, C., Theobald, N., Bester, K. (2007) Emerging pollutants in the North Sea in comparison to Lake Ontario data. Environmental Toxicology and Chemistry, 26, 1081–1089.

 ドイツ北海およびカナダ五大湖に着目し、環境水中に含まれる人為起源化学物質(有機リン系難燃・可塑剤、香料、殺菌剤など)の汚染現状を調査した。全ての水試料からこれら物質(リン酸トリエステル類、ムスク類、トリクロサン類)が検出され、人口当たりの排出量はドイツとカナダで同程度であると推算された。またこれら物質の環境における拡散メカニズムを推察した。

 

Minh, N.H., Isobe, T., Ueno, D., Matsumoto, K., Mine, M., Kajiwara, N., Takahashi, S., Tanabe, S. (2007) Spatial distribution and vertical profile of polybrominated diphenyl ethers and hexabromocyclododecanes sediment core from Tokyo Bay, Japan. Environmental Pollution, 148, 409-417.

 人為起源化学物質による環境汚染の対策を考える場合、歴史的な汚染の推移を把握することが必須である。有機臭素系難燃剤であるPBDEsとHBCDsによる環境汚染の過去復元と将来予測のため、東京湾の底泥柱状試料(セジメントコア)を化学分析に供した。PBDEsとHBCDsは分析に供した1970年代以降の全ての試料から検出され、HBCDs濃度はBDE209の約1/10程度であった。HBCDsの濃度はBDE209より低いとはいえ、30年以上前から環境中に存在している化学物質であることが示された。またこれら物質の歴史的な濃度変化をみると、PBDEsとHBCDsはどちらも今日まで上昇を続けているということが明らかとなった。本研究は日本におけるHBCDsの歴史的推移を明らかにした初めての報告である。将来的な汚染の顕在化を防ぐため、継続的な監視の必要性が提案された。

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2006

Ueno, D., Alaee, M., Marvin, C., Muir, D.C.G., Macinnis, G., Reiner, E., Crozier, P., Furdui, V.I., Subramanian, A., Fillmann, G., Lam, P.K.S., Zheng, G.J., Muchtar, M., Razak, H., Prudente, M., Chung, K., Tanabe, S. (2006) Distribution and transportability of hexabromocyclododecane (HBCD) in the Asia-Pacific region using skipjack tuna as a bioindicator. Environmental Pollution, 144, 238-247.

 日本における臭素系難燃剤PBDEの使用規制により、代替物質としてのHBCDsの使用量が1980年代より増加し続けている。しかしこれまでHBCDのアジア地域における汚染調査は皆無であった。本研究ではHBCDsを対象にカツオを利用した広域モニタリングを実施した。アジア-太平洋域では日本周辺海域におけるHBCDs濃度が高く、日本がその汚染源となっていることが明らかとなった。またそれらHBCDは地球規模の高い移動拡散性を持ち、とくにa-HBCDは高い移動拡散性を持つことを示唆した。

 

Kunisue, T., Muraoka, M., Ohtake, M., Sudaryanto, A., Minh, N. H., Ueno, D., Higaki, Y., Ochi, M., Tsydenova, O., Kamikawa, S., Tonegi, T., Nakamura, Y., Shimomura, H., Nagayama, J., Tanabe, S. (2006) Contamination status of persistent organochlorines in human breast milk from Japan: Recent levels and temporal trend, Chemosphere, 64, 1601-1608.

 福岡県在住授乳婦の母乳中に含まれるダイオキシン類濃度を測定し、それらの蓄積特性および経年変動を調査した。ダイオキシン類濃度(TEQs)は1998年から2004年の間で有意な減少はみられなかった。また初産時の年齢が高いほど、その母乳中TEQsや他の有機塩素化合物(PCBsやDDTsなど)濃度が高い傾向がみられた。第一子のこれら物質の取り込み量が、母親の初産年齢によって変化することが示唆された。

 

Kajiwara, N., Kamikawa, S., Ramu, K., Ueno, D., Yamada, T.K., Subramanian, A., Lam, P.K.S., Jefferson, T.A., Prudente, M., Chung, K., Tanabe, S. (2006) Geographical distribution of polybrominated diphenyl ethers (PBDEs) and organochlorines in small cetaceans from Asian waters. Chemosphere, 64, 287-295.

 有機臭素系難燃剤PBDEによる環境汚染がアジアの外洋域で広がっていることが、カツオを利用したモニタリングにより指摘された。そのような中、アジア-太平洋域から広く採集された鯨類を利用し、沿岸環境のPBDE汚染を調査した。すべての鯨類からPBDEが検出された。それらの地理的分布は、先進工業国である日本よりも東シナ海周辺の海域で採取された鯨類が高濃度であることを示した。東シナ周辺諸国の工業発展にともなうPBDE使用量の増加や、先進諸国からアジア途上国に持ち込まれているe-waste(家電や電子機器などの廃棄物)からの流出などがその要因として考えられた。

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2005

Ueno, D., Watanabe, M., Subramanian, A.N., Tanaka, H., Fillmann, G., Lam, P.K.S., Zheng, G.J., Muchtar, M., Razak, H., Prudente, M., Chung, K., Tanabe, S. (2005) Global pollution monitoring of polychlorinated dibenzo-p-dioxins (PCDDs), furans (PCDFs) and coplanar polychlorinated biphenyls (coplanar PCBs) using skipjack tuna as bioindicator. Environmental Pollution, 136, 303-313.

 ダイオキシン類汚染に関する情報は陸域の環境媒体に偏っており、海洋に関する知見は限られていた。特に外洋環境における移動拡散メカニズムに関しては極めて断片的であった。そのような中、前報で確立したカツオを指標生物として利用し、ダイオキシン類の外洋域での汚染分布および地球規模での拡散メカニズムを明らかにした。外洋域で採取された検体ではPCDDsが検出限界以下であったのに対し、Co-PCBsとPCDFsは太平洋中央部からも検出され、相対的な大気経由の移動拡散性が高いことが確認された。

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2004

Ueno, D., Kajiwara, N., Tanaka, H., Subramanian, A., Fillmann, G., Lam, P.K.S., Zheng, G.J., Muchitar, M., Razak, H., Prudente, M., Chung, K., Tanabe, S. (2004) Global pollution monitoring of polybrominated diphenyl ethers using skipjack tuna as a bioindicator. Environmental Science and Technology, 38, 2312-2316.

 臭素系難燃剤の一種PBDEによる汚染情報は極めて少なく、特に環境中での移動拡散に関する情報は皆無であった。そのような中、前報で確立したカツオを利用し、PBDEの外洋域における汚染現状を調査した。PBDEは太平洋中央部や南半球を含め全ての検体から検出され、広く地球環境を汚染していることが明らかとなった。またPBDEsの移動拡散性は他のPOPsと同等もしくは高いことから、PBDEsは新たなPOPsとして考慮する必要があることを早くから指摘した。またアジア地域のPBDE汚染は、日本周辺海域より東シナ海周辺海域で高いレベルであった。このことから、工業界の自主規制により日本のPBDEs汚染レベルが低減する一方で、これら物質の発生源が東南アジア地域に移動しつつあることを指摘した。

 

Ueno, D., Inoue, S., Takahashi, S., Ikeda, K., Tanaka, H., Subramanian, A.N., Fillmann, G., Lam, P.K.S., Zheng, J., Muchtar, M., Prudente, M., Chung, K., Tanabe, S. (2004) Global pollution monitoring of butyltin compounds using skipjack tuna as a bioindicator. Environmental Pollution, 127, 1-12.

 有機スズ化合物(BTs)とは殺生物剤として船底塗料に利用された化学物質であり、インポセックスを初めとする野生生物の異常を引き起こした原因物質としてよく知られている。BTsによる環境汚染モニタリングは沿岸域で多く実施されてきたが、外洋域の汚染情報は皆無であった。本研究ではカツオの指標生物としての適正(体内分布、成長や性別の影響など)を評価するとともに、外洋域における地球規模のBTs汚染調査を実施した。BTsは太平洋中央部や南半球で採取された検体を含む全てのカツオからも検出され、広く地球上を汚染していることが明らかとなった。アジア地域では日本周辺~東南アジア~インド洋とほぼ同程度のBTs濃度が検出された。日本におけるBTsの使用規制と共に、他のアジア地域でのBTs使用量の増加が要因と考えられた。今後のアジア地域における汚染拡大を防ぐため、環境を監視していく必要性が提案された。

 

Kajiwara, N., Ueno, D., Takahashi, A., Baba, N., Tanabe, S. (2004) Polybrominated diphenyl ethers and organochlorines in archived northern fur seal samples from the Pacific coast of Japan, 1972-1998. Environmental Science and Technology, 38, 3804-3809.

 有害物質による環境汚染対策を考える場合、歴史的な汚染の推移を把握することは必須である。本研究では1970年代から継続して採取されてきた三陸沖キタオットセイ脂肪の保存試料を利用し、臭素系難燃剤(PBDE)による過去の汚染を復元した。その結果、過去に禁止となったPCBsを含むPOP類濃度が減少している一方で、PBDEs濃度は1998年の段階で増加傾向にあることが明らかとなった。将来的なPBDE汚染の顕在化を防ぐため、継続的な監視の必要が提案された。

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2003

Ueno, D., Inoue, S., Ikeda, K., Tanaka, H., Yamada, H., Tanabe, S. (2003a) Specific accumulation of polychlorinated biphenyls and organochlorine pesticides in Japanese common squid as a bioindicator. Environmental Pollution, 125, 227-235.

 有害化学物質による海洋汚染をより簡便に調査するためには、指標生物を利用した監視システムを構築する必要がある。本研究では日本周辺海域に広く分布し、かつ漁獲量の多いスルメイカに着目し、残留性有機化合物(POPs:PCBsやDDTsなど)による海洋汚染の調査方法を模索した。全てのスルメイカから高濃度のOCsが検出され、またそれらOCs濃度には成長や季節の影響はみられなかった。スルメイカは日本周辺海域のPOPs汚染の地域比較に利用可能であることが明らかとなった。

 

Ueno, D., Takahashi, S., Tanaka, H., Subramanian, A.N., Fillmann, G., Nakata, H., Lam, P.K.S., Zheng, J., Muchtar, M., Prudente, M., Chung, K.H., Tanabe, S. (2003b) Global pollution monitoring of PCBs and organochlorine pesticides using skipjack tuna as a bioindicator. Archives of Environmental Contamination and Toxicology, 45, 378-389.

 残留性有機化合物(POPs:PCBsやDDTsなど)による海洋汚染は地球規模で広がっていることが知られている。しかし外洋域における汚染情報は極めて断片的であり、包括的かつ継続的な調査システムの構築が望まれている。本研究ではカツオを指標生物として利用した、外洋域監視システムを考案した。カツオを世界各地から採集しPOPsによる地球規模の海洋汚染を調査したところ、太平洋中央部や南半球から採取された検体も含め、全てのカツオからPOPsが検出された。またこれらカツオ中POPsの濃度分布から、物質ごとの大気経由の移動拡散性についても議論した。

 

Monirith, I., Ueno, D., Takahashi, S., Nakata, H., Sudaryanto, A., Subramanian, A., Karuppiah, S., Ismail, A., Muchtar, M., Zheng, J., Richardson, B.J., Prudente, M., Hue, N.D., Tana, T.S., Tkalin, A.V., Tanabe, S. (2003) Asia-Pacific mussel watch: monitoring contamination of persistent organochlorine compounds in coastal waters of Asian countries. Marine Pollution Bulletin, 46, 281-300.

 人為起源汚染物質による海洋汚染の情報は先進諸国に偏っており、アジア発展途上国におけるデータは極めて断片的である。本研究ではアジア-太平洋域で広くイガイを採集し、それらに蓄積されている残留性有機化合物(POPs:PCBsやDDTsなど)による汚染現状を調査した(アジア-太平洋・マッセルウオッチプロジェクト)。工業国である日本は工業用途のPCBsなどが、東南アジアの途上国では農薬用途のDDTsやHCHsなどが高濃度で検出された。また各物質ごとの汚染レベルは、各国のGNP(国民総生産)と関係があることを提案した。

 

Kajiwara, N., Ueno, D., Monirith, I., Tanabe, S., Pourkazemi, M., Aubrey, D.G. (2003) Contamination by organochlorine compounds in sturgeons from Caspian Sea during 2001 and 2002. Marine Pollution Bulletin, 46, 741-747.

 カスピ海ではキャビア(チョウザメ卵)生産量の減少が問題となっているが、人為起源化学物質の汚染による生態系破壊がその一因として疑われている。本報では廃棄対象となっているチョウザメ骨格筋に着目し、カスピ海での残留性有機化合物(POPs:PCBsやDDTsなど)汚染の現状を報告した。分析に供した全てのチョウザメからPOPsが犬種移された。魚類中POPs濃度を国際的に比較した場合、これらチョウザメからは比較的高濃度でPOPsを蓄積していることが明らかとなった。

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2002

Ueno, D., Iwata, H., Tanabe, S., Ikeda, K., Koyama, J., Yamada, H. (2002) Specific accumulation of persistent organochlorines in bluefin tuna collected from Japanese coastal waters. Marine Pollution Bulletin, 45, 254-261.

 有害化学物質による海洋汚染をより簡便に調査するためには、指標生物を利用した監視システムを構築する必要がある。本研究では廃棄対象となるクロマグロの肝臓に着目し、残留性有機化合物(POPs:PCBsやDDTsなど)による海洋汚染の調査方法を模索した。クロマグロは成長するについてPOPsを高濃度(脂肪重当たり)に蓄積することがわかったため、体長によって補正した濃度(BLNV: Body Length Normalized Value)をもちいて汚染レベルを比較する手法を提案した。

 

de Brito, A.P.X., Ueno, D., Takahashi, S., Tanabe, S. (2002) Organochlorine and butyltin residues in walleye pollock (Theragra chalcogramma) from Bering Sea, Gulf of Alaska and Japan Sea. Chemosphere, 46, 401-411.

 アラスカ湾とベーリング海はタラの漁場として有名であるが、その海域における有機スズ(BTs)汚染に関する報告は皆無であった。本報ではタラを利用し、ベーリング海のBTs汚染を調査した。分析に供したすべての検体からこれら物質が検出され、その濃度は日本海で採取されたタラと比べ低いレベルであった。人間活動の少ないこれら地域におけるBTsの汚染源の検索の必要性が示唆された。

 

de Brito, A.P.X., Ueno, D., Takahashi, S., Tanabe, S. (2002) Contamination by organochlorine compounds in walleye pollock (Theragra chalcogramma) from the Bering Sea, Gulf of Alaska and the Japan Sea. Marine Pollution Bulletin, 44, 172-177.

 アラスカ湾とベーリング海はタラの漁場として有名であるが、その海域の残留性有機化合物(POPs:PCBsやDDTsなど)汚染に関する報告は少ない。本報ではタラを利用し、ベーリング海のPOPs汚染をを調査した。PCBsやDDTs濃度は日本周辺海域で採取されたタラと比べ低かったが、HCHsは高濃度で検出された。アジア諸国で使用されたHCHsが、大気経由でアラスカ湾やベーリング海のような北方海域に輸送され蓄積されたものと推察された。

 

de Brito, A.P.X., Takahashi, S., Ueno, D., Iwata, H., Tanabe, S., Kubodera, T. (2002) Organochlorine and butyltin residues in deep-sea organisms collected from the western North Pacific, off-Tohoku, Japan. Marine Pollution Bulletin, 45, 348-361.

 深海はその試料採取の困難さから、人為起源有害物質による汚染に関する情報は極めて少ない。本研究では東北沖で採取された深海魚を利用し、残留性有機化合物(POPs:PCBsやDDTsなど)や有機スズ(BTs)などによる深海の汚染現状を調査した。深海魚の深浅回遊パターンによってPOPsやBTsの蓄積パターンが異なるり、それらは物質の汚染源や物理化学性の違いを反映していることを明らかにした。

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2001

上野大介, 高橋 真, 田辺信介, 池田久美子, 小山次朗, 山田 久 (2001) 季節,サイズおよび生息深度によるムラサキイガイ中有機塩素化合物蓄積濃度の変動. 日本水産学会誌, 67, 887-893.

 有害化学物質による海洋汚染をより簡便に調査するためには、指標生物を利用した監視システム(マッセルウオッチプロジェクト)を構築する必要がある。自生ムラサキイガイを利用する場合、季節、サイズ、生息深度がそれらの有機塩素化合物(OCs:PCBsやDDTsなど)の蓄積濃度におよぼす影響を明らかにする必要がある。さまざまな条件で自生ムラサキイガイを採取し、それら条件の及ぼす影響を調査した。分析の結果、季節、サイズ、生息深度はOCsの蓄積濃度に有意な影響を及ぼさず、それら要因は考慮せずにOCs濃度の比較が可能であることが明らかとなった。

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1999

上野大介, 高橋 真, 田辺信介, 池田久美子, 小山次朗 (1999) イガイ移植実験における有機塩素化合物の蓄積挙動. 環境化学, 9, 369-378.

 有害化学物質による海洋汚染をより簡便に調査するためには、指標生物を利用した監視システム(マッセルウオッチプロジェクト)を構築する必要がある。慣例的にアジア地域ではムラサキイガイとミドリイガイの両種を利用してきたが、詳細な種間差は不明であった。これら2種の有機塩素化合物(OCs:PCBsやDDTsなど)の取り込み速度や蓄積濃度の種間差を調べるため、2種を東京湾での移植実験を実施した。これら2種の間に蓄積濃度や取り込み速度などに有意な差はみられず、これら2種のOCs濃度比較は可能であることが明らかとなった。

 

 

 

著書

上野大介 (2011) 環境動態・水界・POPs,農薬など有機化合物, in 環境毒性学, ed. 渡邉泉 and 久野勝治, 朝倉書店, 東京, pp 31-35.

本書は、さまざまな化学物質の環境挙動およびそれらの毒性について、メカニズムにも踏み込んだ形で詳細に述べた専門書である。基礎的な部分から最新の研究結果までを網羅した解説書と言え、ある程度の基礎知識をもった学習者がさらに詳細な部分に踏み込むうえで活用できると期待される。

 

上野大介 (2010) 水の汚染, 吉原利一編, 地球環境テキストブック環境科学, オーム社, 東京, pp 128-160.

本書は、日々ニュース等で耳にしている環境問題を、水・土・大気・生態系のような分野ごとに、わかりやすく解説した教科書である。本章では水環境の汚染に関する事象を化学の視点でまとめており、水の化学的性質、有機汚濁、リン酸・硝酸、セッケン・洗剤、原油・石油、重金属、有機塩素化合物、などについて歴史的背景にそって解説している。巻末に使えるウエブサイト集や演習問題、コラム「植物系洗剤はほんとうに優しいのか」なども掲載。

 

田辺信介, 上野大介 (2004) カツオ-2, 竹内一郎, 田辺信介, 日野明徳 編, 水産学シリーズ140, 微量人工化学物質の生物モニタリング, 恒星社厚生閣, 東京, 129-136.

本書は、貝類や魚類など海の生物を利用した海洋汚染モニタリングに関するシンポジウム「生物による微量人工化学物質のモニタリング」の内容をまとめた学術書である。本章では、カツオをもちいた外洋域の海洋汚染モニタリング手法について、有機塩素化合物への応用法を論じている。Ueno et al. (2003b)の結果を簡易にまとめたものである。

 

 

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国立大学法人(九州地区) 
佐賀大学 農学部 生物環境科学科 (佐賀大学 大学院 農学研究科)
生物環境保全学コース 生物環境学分野 環境分析化学研究室
上野大介

〒840-8502 佐賀市本庄町1番地(本庄キャンパス)
電話:0952-28-8713(農学部総務係)

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